調査研究報告 第32号(平成20年12月)
- 3201 無機分析によるタマネギの原産国(日本-外国)判別法の開発(PDF: 34KB)
タマネギ(Allium cepa L.)を酸分解して調製した試料溶液を誘導結合プラズマ発光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法により、国産279試料及び外国産74試料について多元素を定量した。線型判別分析を行うことで、11元素(Na、Mg、P、Mn、Zn、Rb、Sr、Mo、Cd、Cs及びBa)から成る原産国を判別する関数を構築し、タマネギの原産国が日本か外国かを判別する手法を開発した。この判別法の判別誤差を見積もった結果、国産品は3 %、外国産品は30 %となり、スクリーニング判別法として十分に使えるレベルであることが確認できた。
- 3202 窒素安定同位体比を用いた化学肥料使用判別法の検討(PDF: 56KB)
化学肥料を使用せずに栽培した「有機農産物」等の表示の科学的な検証方法として、近年、窒素の安定同位体比を指標とした方法が報告されていることから、有機農産物及び慣行栽培農産物を含む約250試料について、窒素安定同位体比の比較検討を行った。慣行栽培農産物を含む化学肥料使用農産物の窒素安定同位体比の平均値は、有機農産物と1 %の水準で有意な差がみられた。
- 3203 超感度エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた乾しいたけの栽培法及び原料原産地判別の簡易・迅速測定法の検討(第1報)(PDF:756KB)
超感度エネルギー分散型蛍光X線分析装置(新型EDXRF)を用いて、事前にICP分析により濃度を測定した乾しいたけ16サンプルを試料として、P、K、Mn、Fe、Cu、Zn、Rb及びCdの蛍光X線スペクトルを測定した。その結果、ICP分析による濃度測定値(ppm)と蛍光X線強度(cps)は、いずれの元素とも高い相関を示すことが確認された。以上により、新型EDXRFが乾しいたけの栽培方法及び原料原産地の簡易・迅速判別に利用できる可能性が示唆された。
- 3204 超感度エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた乾しいたけの栽培法及び原料原産地判別の簡易・迅速測定法の検討(第2報)(PDF:498KB)
超感度エネルギー分散型蛍光X線分析装置(新型EDXRF)を用いて、乾しいたけ(中国産菌床栽培品31サンプル、中国産原木栽培品36サンプル、日本産原木栽培品39サンプル)106サンプルを試料として、P、S、Cl、K、Ca、Mn、Fe、Cu、Zn、Br、Pb、Rb及びSrの13元素の蛍光X線スペクトルを測定した。栽培方法、原料原産地を判別するための判別関数を構築した。その結果、菌床と原木の判別はZnの1元素で判別的中率が100 %、日本産原木と中国産原木との判別はFe、Cu、Pb、S、Br及びClの6元素で93.3 %、日本産原木と中国産原木と中国産菌床の判別はP、Cu、Zn、Pb、Mn、Br及びClの7元素で95.3 %となった。新型EDXRFを用いることにより、乾しいたけの栽培方法及び原料原産地の判別を簡易・迅速に実施できる可能性が示唆された。
- 3205 波長分散型蛍光X線分析装置を用いたマツタケの原産国判別の検討(PDF:475KB)
波長分散型の蛍光X線分析装置により、10種類の認証標準物質を用いて17元素(N、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Fe、Cu、Zn、Se、Br、Rb及びSr)を対象に検量線を引いたところ、14元素について高い相関係数(r2≧0.96)が得られた。17元素についてこれら検量線を含む分析条件を定め、既に他の分析法で定量値が得られている乾シイタケとタマネギ試料の定量を行ったところ、一部元素を除いて良好な結果が得られた。この条件でマツタケ(Tricholoma matsutake)の定量分析を行い、日本、韓国、北朝鮮、中国産品の原産国判別を試みた。線型判別分析により判別関数を構築したところ、スクリーニングには使えるレベルの判別精度が得られた。本研究により、蛍光X線分析が農産物の原産地判別に利用できることが示された。
- 3206 炭素及び窒素安定同位体比を用いた養殖魚と天然魚の判別法の検討(PDF: 95KB)
マダイ(Pagrus major)の養殖のものか天然のものかを判別するために、安定同位体分析による判別法の検討を行った。マダイ筋肉を凍結乾燥後脱脂し、安定同位体比質量分析計により炭素安定同位体比及び窒素安定同位対比を測定した。養殖マダイ群と天然マダイ群間で、炭素安定同位体比は有意水準1 %で有意な差がみられたが、窒素安定同位体比は有意水準5 %においても有意な差はみられなかった。炭素安定同位体比の両集団間の分布にはオーバーラップする部分が多かった。そのため、炭素及び窒素安定同位体比分析により、養殖マダイと天然マダイを判別するのは困難であることが明らかとなった。
- 3207 生糸機械検査システムの開発に関する研究(第4報)-日本と中国との生糸機械検査比較-(PDF: 89KB)
本部横浜事務所では、「生糸機械検査システム」の改良・開発をしてきた。本年度は、引き続き「縦型実用検査装置」について、電源構成の整備及び節信号をパルスカウンターボードに直接接続するなどの改良を行った。また、日中の生糸機械(電子)検査システムの比較試験を実施し、中国システムでは検査糸長が長く出ること、平均繊度に日中の差がみられないこと、並びに、大中節及び小節の検出数では同様の傾向が見られるが、中国システムでは静電容量センサーのために、わ・さけ系節の検出が困難であることを明らかにした。