調査研究報告 第35号(平成23年10月)
- 3501 魚介類種判別法のDNA 抽出法の検討(PDF:325KB)
農林水産消費安全技術センターでは各種魚介類の種判別法が開発され、表示監視業務で利用されている。現行の判別法ではDNAの抽出に、DNeasy Blood & Tissue Kitを使用しているが、分析の効率化及び試験者の負担の軽減を図るため、一度に多検体のDNAを抽出できるDNeasy 96 Blood & Tissue Kitを使用可能か検討した。その結果、マグロ属魚類及びサケ科魚類のDNA抽出にDNeasy 96 Blood & Tissue Kitを使用しても、現行のDNeasy Blood & Tissue Kitと同様に、PCRによってDNA増幅産物が得られることが分かった。
- 3502 缶詰等の水産加工食品の原料魚種判別(PDF:490KB)
サバ属及びサケ科魚類を原料とした缶詰等の加熱・加圧された加工食品の原料魚種判別を可能とするため、既存の報告を参考にして設計した新たなPCRプライマーセットによる判別法の検討を行った。サバ属3種の魚種判別法については、DNAシークエンス法及びPCR-RFLP法による判別法を設計し、収集した市販の加工食品26点で魚種判別を実施したところ、すべて判別可能であった。サケ科魚類8種の魚種判別法については、DNAシークエンス法による判別法を設計し、収集した市販の加工食品23点で魚種判別を実施したところ、一部の試料でPCR産物が得られず種判別が不能であった。サバ属魚類の判別法は、加熱・加圧された加工食品の原料魚種判別に有効であると考えられた。また、サケ科魚類の判別法を加熱・加圧された加工食品へ適用するには、更なる改良が必要であることが示唆された。
- 3503 超高感度エネルギ-分散型蛍光X線分析装置による乾しいたけの栽培方法及び原料原産地判別法の検証(PDF:365KB)
これまでに、超高感度エネルギ-分散型蛍光X線分析装置を用いて、乾しいたけの栽培方法及び原料原産地の判別について検討し、栽培方法、原料原産地の両判別モデルを構築することができた。今回は、これらの判別モデルが複数試験室で運用できるかを検討するため、原料原産地及び栽培方法を非明示にした試料を用いて3試験室で栽培方法及び原料原産地の予測試験を行った。その結果、これまでに構築した判別モデルでは、当初想定した予測精度が得られなかった。このため、新たな元素濃度データを追加し、栽培方法を判別するモデルを再構築することにより原木栽培品と菌床栽培品を精度良く予測でき、また、原料原産地を判別するモデルを再構築することにより日本産原木栽培品と中国産原木栽培品を精度良く予測できた。
以上により、超高感度エネルギ-分散型蛍光X線分析装置による元素分析は、乾しいたけの栽培方法及び原料原産地の簡便な予測に複数の試験室で利用できることが示唆された。
- 3504 イソマルトース分析による果実飲料の真正性判定法の開発(PDF:376KB)
「加糖」と表示の無い果実ジュース、果実ミックスジュース及び果実・野菜ミックスジュース並びに濃縮果汁、異性化液糖及び青果の搾汁中のイソマルトースを測定して、その含有量から「加糖」と表示の無い果実ジュース、果実ミックスジュース及び果実・野菜ミックスジュース中に混入した異性化液糖の判定ができるかを検討した。
その結果、イソマルトース濃度が100 mg/L以上の果実種を除いた果実種からなる果実ジュース、果実ミックスジュース及び果実・野菜ミックスジュース(n=125)並びに濃縮果汁を果実飲料品質表示基準(平成12年12月19日農林水産省告示第1683号)に従って希釈調製したジュース(n=46)の171試料から得られたイソマルトース濃度の平均値及び標準偏差はそれぞれ16.4及び13.7 mg/Lであり、正規QQ(分位数-分位数)プロットで正規性を示した対数変換値から導いた[平均値+3σ]値は89.5 mg/Lであった。一方、異性化液糖のイソマルトース濃度の平均値及び標準偏差はそれぞれ8971.4及び2819.1 mg/Lであった。糖用屈折計示度6、7、8及び9 oBxの果実ジュース、果実ミックスジュース及び果実・野菜ミックスジュースの糖用屈折計示度の10 %が異性化液糖に置換されたときの異性化液糖由来のイソマルトース濃度はそれぞれ72.7、84.8、96.9及び109.0 mg/Lと算出できた。よって、異性化液糖の混入量が10 %以上あれば、糖用屈折計示度8 oBx以上の果実ジュース、果実ミックスジュース及び果実・野菜ミックスジュースでその混入を判定できることが示された。
- 3505 グリセリン等を指標とした丸大豆しょうゆの判別法の検討(PDF:399KB)
本研究は、「丸大豆しょうゆ」の表示が行われた製品に表示と異なって脱脂加工大豆が使用されていること等を判別する為の検査技術を開発することを目的に行った。この結果、丸大豆しょうゆと脱脂大豆しょうゆのグリセリン含有量や多環ピラジンの含有量に、片側検定1 %未満の危険率で有意な差が認められたが、両成分を用いた線形判別では、丸大豆しょうゆの誤判別率を実用的な5 %以下と設定した場合に脱脂大豆しょうゆの検出率は約30 %となり、「丸大豆しょうゆ」と「脱脂大豆しょうゆ」を確実に判別することができなかった。